映画公開年別マイベスト 1954年

映画年別マイベスト

今回の記事では、公開年別のマイベスト映画作品をご紹介します。
評点は5.0~1.0まで、0.5点きざみの9段階評価で、平均以上となる3.0以上の作品をランクインさせています。

今回取り上げたのは1954年で、7本の作品が3.0点以上でした。

7位 七人の侍 3.0

映画史上の屈指の名作として日本が世界に誇る時代劇。
農民に雇われた侍たちが村を野武士から守るために一人また一人と集結し、訓練を積んで戦いに臨む物語です。
野武士との対決という本筋に、淡いロマンスや一般庶民としての農民たちのしたたかなたくましさが絡むように描かれて、クライマックスの大迫力のアクションへと向かっていく盛りだくさんのプロットはエンタメとして抜群ですし、侍たちのキャラクターも個性的で楽しかったです。
しかし過ぎたるは及ばざるが如しという印象が残ったのも正直なところです。
詰め込まれた要素をもっとタイトに描くことも、その要素自体を削ることもできた気がしてしまい、特に中盤は冗長な印象でした。

6位 世代 3.0

ポーランドが誇る巨匠アンジェイ・ワイダの監督デビュー作。
ナチス占領下のワルシャワを舞台に、石炭泥棒を働いていた青年がレジスタンス活動に身を投じて行く物語です。
主人公の行動には確固たる信念があるわけでなく、若者のやり場のないエネルギーのはけ口であり、淡い恋の行き先がたまたま反ナチ活動である設定が絶妙で、青春映画としての汎用性がもたらされている気がしました。
ネオレアリズモの影響が色濃い淡々とした語り口ながら、若者が漠然とした将来に抗い敗北していく物語の作りはアメリカンニューシネマを先取っているようにも感じられました。

5位 ロビンソン漂流記 3.0

冒険小説の金字塔をブニュエルが意外にも真っ当に映画化した作品。
アリエル賞で六冠に輝き、自身初の英語作品として「昼顔」以前のブニュエル作品ではアメリカで最も興行的に成功するなど、メキシコ時代の代表作と言えます。
黒人奴隷売買の船旅に出るものの漂流し、無人島でサバイバル生活を送ることになったロビンソン・クルーソーが知恵をこらして生き延びる様を描いた物語です。
父親の幻覚を見るシーンこそ不気味でしたが、基本的には子どもにも分かるようなシンプルな語り口になっています。
猫や犬や鳥、さらには虫にも友情を見出そうとするも満たされない長年の孤独の中、見知らぬ足跡を見つけた時に喜びよりも恐怖を感じてしまう場面が印象的でした。
その後のフライデーとの生活や関係性の変化、そして結末までが短い尺の中でうまく構成されていました。
ブニュエルらしいアクの強さはないものの、王道の冒険物語を正攻法で描く確かな演出力を感じられる佳作でした。

4位 道 3.5

イタリア映画史上屈指の名作と名高いフェリーニの代表作。
粗野な大道芸人の男とその助手として連れ添うことになった女の関係性の変化を通して、孤独な人間が自身の存在意義を求める姿を描いています。
二人はいずれも孤独な人間ですが、その感受性に大きな差があったことがすれ違いを生む哀しい物語です。
助手は変わり者ながらその豊かな感性で微妙な関係の変化を細やかに感じ取っており、孤独な心に希望を抱き、失望を経て安らぎを得るに至りますが、その繊細さゆえに心を壊してしまいます。
男が彼女の感受性に追いついたのは何年も後になってからで、それにようやく気がついた時の慟哭が今作のラストを映画史に残る名シーンにしています。
助手の女の優しい母性と無垢な少女性をあわせ持ったキャラクターは魅力的ですが、家族との関わりにおけるバックグラウンドがほとんど描かれないのは残念で、そこに不確かな存在意義と孤独が感じられていたら、彼女の渇望にもっと説得力があった気がしました。

3位 ゴジラ 3.5

日本が世界に誇るキャラクターであり、特撮怪獣映画の金字塔。
そして後に数十作も続くシリーズを生み出すことになるモンスターパニック映画としてだけではなく、強烈な反核のメッセージが込められていることも本作を特別なものにしており、これを人類史上唯一の核攻撃を受けてから十年も経たない時期に制作している事実には驚きを禁じ得ません。
オープニングクレジットの抜群のカッコ良さ、恐怖感を煽りながらも心躍らせるテーマ曲、山の向こうから初登場するゴジラの姿、破壊される昭和の街並み。前半だけで大いに心を掴まれました。
後半、火の海と化した東京を背に進行するゴジラの姿と、理不尽に自分たちの生活が破壊される様を悔しそうに見つめながらなす術もない無力な市民の対比が印象的でした。
そこまでの盛り上がりに比べるとラストはあっけないのですが、科学者の悲哀という一つのドラマと社会的メッセージを重ねた落とし所としては文句なしでした。

2位 ダイヤルMを廻せ! 3.5

サスペンスの神様ヒッチコックによる同名の舞台劇の映画化であり、ほぼ全編にわたって室内で展開されるミステリー色強めの1本。
トリックや謎解きを含めたストーリーにはそれほど驚きがありませんが、安定した演出で安心して観られます。
裁判シーンのチャレンジングな視覚表現は、場面を持ち出さないことで観客の意識を留める効果と同時に、心理描写としても印象的です。

1位 裏窓 4.5

巨匠ヒッチコックによるシチュエーションスリラーの先駆的傑作。
場面を限定したことで、謎解きのストーリーよりもサスペンス的状況を描くことを重視したヒッチコックの手腕が冴えわたり、状況説明を1カットで済ませてしまう冒頭のカメラワーク、双眼鏡やカメラといった随所で活躍する小道具、ゴージャスでアクティブなヒロインの活躍と見どころをこれでもかと詰め込みながら、1シチュエーションだけで作品を見事に成立させています。


いかがでしたでしょうか。
1954年は映画史上屈指の名作がいくつも生まれた中で、娯楽映画を極めたヒッチコックがキャリアの絶頂期にあった年でした。
次回の記事では、1967年を取り上げます。

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