映画公開年別マイベスト 1955年

映画年別マイベスト

今回の記事では、公開年別のマイベスト映画作品をご紹介します。
評点は5.0~1.0まで、0.5点きざみの9段階評価で、平均以上となる3.0以上の作品をランクインさせています。

今回取り上げたのは1955年で、4本の作品が3.0点以上でした。

4位 コケティッシュな女 3.0

コケティッシュな女を見て憧れてしまった人妻の葛藤を描くゴダール初期の短編。
手紙という形式で思考を早口でまくし立てるのですが、その危うい思考がある意味ピュアでユニークな一方で、街中を歩く女性をとらえたショットはスタイリッシュに見えるギャップがおもしろかったです。
自分が人からどう見えているか、自分を人にどう見せたいかという自意識にとらわれた人の内面を観客に覗かせる着眼点が素晴らしかったと思います。

3位 ハリーの災難 3.0

傑作サスペンスを連発していた時期のヒッチコックの箸休め的な異色のブラックコメディ。
のどかな町の森で死体が見つかったことから、自分が殺したと勘違いした人々がその死体をめぐって不謹慎な騒動を巻き起こす物語です。
引きずられたり、靴を盗まれたり、死に顔をスケッチされたり、何度も埋めては掘り返されたりと死人のハリーが散々な目にあうのが笑えました。
いつも死体はサスペンスを引き起こすためのトリガーでしたが、今作ではシュールなギャグを生むためのアイテムとして利用するヒッチコックの演出力を楽しめました。
しかし終盤に保安官が絵を見つけてからの数分間の緊張感が魅力的で、その後のフィルモグラフィを見ても分かる通り、やはりヒッチコックの本領はサスペンス演出にあるのだと感じられました。

2位 狩人の夜 3.5

伝道師の姿を借りながら人を殺すことに一切良心の呵責を感じないシリアルキラーと少年の攻防を描いたスリラーの古典的傑作。
ストーリー展開には古臭さが否めませんし、どこかのほほんとした雰囲気がスリルを薄めているのも確かなのですが、殺人鬼のキャラクターがとにかく魅力的で、右手と左手の話をする時の自己陶酔感やふとした瞬間に見せる真顔の恐ろしさが作品の説得力を作り出しています。
モノクロならではの陰影が素晴らしく、室内に差し込む月明かりや、遠景に映る馬に跨がる姿は美しかったです。
終盤露骨に宗教的道徳色が強くなりますが、全編通して示唆され続けているので唐突には感じず、むしろ主たる視点が少年でも殺人鬼でもなくなってしまうことへの違和感が気になりました。

1位 理由なき反抗 4.0

ジェームズ・ディーンの代名詞的な作品であり、夭逝した伝説的スターを思い浮かべた時の赤いジャケットに白いティーシャツとリーのジーンズをまとった姿は、今作で披露したものです。
彼のファッションのみならず、度々映画で再現される50年代アメリカのハイスクールのフォーマットは今作が作り上げたものだと目に見えて感じられました。
無責任な父とヒステリックな母と一言多い祖母との間で引き裂かれてアイデンティティを確立できていなそうな主人公は、自らの存在証明をするかのようにチキンレースに立ち向かい、結果として悲劇を招いてしまいます。
不良グループと付き合いながらも家庭の中に居場所がないことで主人公と共鳴するヒロインの内面は描ききれておらず、それゆえに束の間の安らぎとなっていたロマンスに今ひとつ重要性を持たせられていないのが残念ではありますが、ジェームズ・ディーンの表情と佇まいは、どこにも心安らげる居場所のなかった孤独と苦悩を見事に体現しており、とてつもなく魅力的でした。


いかがでしたでしょうか。
1955年は伝説のスターがハリウッドを駆け抜けた年でした。
次回の記事では、1950年を取り上げます。

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