映画公開年別マイベスト 1956年

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今回の記事では、公開年別のマイベスト映画作品をご紹介します。
評点は5.0~1.0まで、0.5点きざみの9段階評価で、平均以上となる3.0以上の作品をランクインさせています。

今回取り上げたのは1956年で、5本の作品が3.0点以上でした。

5位 鉄道員 3.0

戦後イタリアのネオレアリズモの時代が生んだ自作自演の映画人ピエトロ・ジェルミの代表作。
気難しくて酒浸りの鉄道運転士の父と彼を取り巻く家族や友人の関係を末の息子の視点で描いたドラマです。
仕事を失い、家庭は崩壊し、仲間達からはスト破りと白い目で見られる主人公は正にどん底にあり、それを幼い息子が健気に見つめる構図は「自転車泥棒」を思わせますが、今作ではその息子の行動力が物語を異なる展開へと導き、哀しくも救いのある結末を迎えることになります。
戦後10年の月日がイタリア映画に希望を取り戻させたのか、後にコメディ路線へと進むジェルミの明るさが反映されたのかは分かりませんが、万人受けしそうな感動のヒューマンドラマに仕上がっています。

4位 抵抗(レジスタンス)-死刑囚の手記より- 3.0

リアリズムを追求した映像作家ロベール・ブレッソンの脱獄サスペンス。
ナチスによって収監されたフランス人レジスタンスの男が脱獄に向けて地道な準備を進めていく物語です。
視点を獄中の主人公だけに絞り空間も時間もそこから動かさないストイックさと、最小限の会話の代わりに雄弁なモノローグが観客を主人公に同化させます。
分かりやすいサスペンスとカタルシスに繋がるドラマを犠牲にしてまでナチス側を没個性化したのも、レジスタンス側の視点を追体験するのに効果的でした。
そこまでストイックにしたからこそ、そして流れるようなカメラワークが見事だったからこそ、時折感情を説明するモノローグが余分に感じてしまい、もっと極端に映像による表現だけに振り切ってしまっても良かった気がしました。

3位 知りすぎていた男 3.0

イギリス時代の自作「暗殺者の家」をセルフリメイクしたヒッチコック得意の巻き込まれ方サスペンスミステリー。
小道具を効果的に使った演出を数々生み出してきたヒッチコック。今作では名曲ケ・セラ・セラを小道具として絶妙なタイミングで投入しています。
しかし唯一の手がかりである遺言がアジトの場所を示しているというのは、あまりにもそのまますぎて、ストーリーのおもしろみには欠けてます。

2位 地下水道 3.5

アンジェイ・ワイダにカンヌでの初受賞をもたらした監督二作目。
第二次大戦末期のワルシャワを舞台に、ドイツ軍に追い詰められたレジスタンスたちの悲壮な末路を描く物語です。
50年代の作品と思って油断すると、負傷者の姿や機銃掃射の生々しさに驚かされ、予算が潤沢ではないはずの中で戦争映画としての十分な迫力を有していることに感動させられます。
後半はシチュエーションを限定して予算の帳尻を合わせたと考えることもできますが、それをネガティブに捉えられない程、地下水道に潜ってからが面白いのは素晴らしいです。
公開当時のポーランドでは、英雄像からは程遠い汚物まみれの無益な死が不評だったそうですが、彼らをヒロイックに描かないスタンスが戦争自体の無益さを表し、本作に普遍性をもたらしたと感じます。

1位 現金に体を張れ 4.0

キューブリック初期の代表作となったクライムサスペンス。
物語自体は平凡ながら、ストーリーを分解し、それぞれの視点で語りなおすことにより、スリリングで魅力的なものに仕上げています。
この手法がタランティーノ、ノーラン、ガイ・リッチーなど90年代にデビューした監督たちの初期作に与えた影響は計り知れません。
金のために奔走した人々を嘲笑うように紙幣が風に舞うラストシーンは秀逸です。


いかがでしたでしょうか。
1956年は年でした。
次回の記事では、2002年を取り上げます。

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