今回の記事では、公開年別のマイベスト映画作品をご紹介します。
評点は5.0~1.0まで、0.5点きざみの9段階評価で、平均以上となる3.0以上の作品をランクインさせています。
今回取り上げたのは1970年で、3本の作品が3.0点以上でした。
3位 ひまわり 3.0
役者としても活躍した名匠デ・シーカ晩年の代表作。
戦争によって引き裂かれた男女の悲劇を描く物語です。
メロドラマの最高峰的な作品ですが、序盤はコメディも得意としたデ・シーカのユーモアセンスがお馴染みの2人のかけ合いの中に光り面白かったです。
そしてそのじゃれあいが微笑ましいほど、その後に訪れる別れとままならない状況の切なさを際立てています。
パンにティルトにズームイン/アウト、トラッキングといったカメラの基本テクニックが教科書のように巧みに取り入れられ、特に有名なひまわり畑を映したオープニングショットでの超遠景から足元の一本へと目を落とすような動きが素晴らしかったです。
得意なジャンルではないですが、下手に長大な物語にせず、シンプルでテンポ良く見せてくれるおかげで王道のドラマを飽きずに堪能できました。
2位 哀しみのトリスターナ 3.0
ブニュエルが再びカトリーヌ・ドヌーヴを起用して描いた支配したい男と独立したい女の愛憎劇。
貴族でありながら家具や食器を売りに出して暮らす老紳士が養子として育てた娘を事実上の妻として扱うも、他の男に恋をした娘は父としても夫としても老紳士を拒絶する物語です。
血の繋がりがないとはいえ、娘を女として愛することに躊躇のない感覚に驚かされますが、その点を除けば1時間は平凡なメロドラマのようで退屈でした。
しかし終盤の30分で2人に距離が生まれてからの展開が秀逸で、最早愛というよりも食器を買い戻すのと同じ類の度を超えた執着と、有無を言わせない度を超えた憎しみが交錯する様はスリリングでした。
ただ手術を迫られる場面で執着心が暴走する展開を期待したのですが、そうとはならず少し物足りなかったです。
憎しみの方がフォーカスされていって行き着く結末は素晴らしかっただけに、後半にもっと比重を置いた構成で観てみたかったです。
1位 ロバート・デ・ニーロのブルーマンハッタン/哀愁の摩天楼 3.0
デ・ニーロを主演に据えたデ・パルマ初期の怪作。
向かいのマンションを盗撮したポルノを”peep art”と名づけ制作会社に売り込む青年を若きデ・ニーロが演じているのですが、前半はテレビのホームコメディのような音楽と軽快な編集でライトなブラックコメディのような雰囲気が漂っていて楽しかったです。
しかし後半、黒人解放運動のパフォーマンス活動に加わるあたりから青年の狂気が垣間見えると、デ・ニーロも本領発揮し始めます。
劇中劇的なそのパフォーマンス映像は、ショーであるのが分かっていても何か起こってしまいそうな緊張感があり、ゾッとする恐ろしさでした。
そして終盤はテロ活動と爆殺からのインタビューで母親への笑顔の呼びかけという予想外すぎる展開の連続で駆け抜けます。
監督が自分の表現したいことを好き勝手に詰め込んだいかにもインディーズ感あふれるカオスな結末でしたが、ユーモアと狂気を絶妙なバランスでミックスするデ・パルマのセンスは感じられた気がします。
いかがでしたでしょうか。
1970年は巨匠と若手の秀作が混在した年でした。
次回の記事では、1961年を取り上げます。
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