映画公開年別マイベスト 1998年

映画年別マイベスト

今回の記事では、公開年別のマイベスト映画作品をご紹介します。
評点は5.0~1.0まで、0.5点きざみの9段階評価で、平均以上となる3.0以上の作品をランクインさせています。

今回取り上げたのは1998年で、13本の作品が3.0点以上でした。

13位 リング 3.0

90年代末から00年代前半にかけてアニメと並んで日本映画界が世界に誇れるコンテンツとなったジャパニーズホラーの金字塔。
貞子という日本的な幽霊や怨念という要素を持ちながら、世界に誇れるモンスターを生み出した功績は素晴らしいと思います。
ブラウン管のテレビにビデオテープ、そしてダビングという行為にも時の経過を感じますが、演出自体の古臭さもやけに懐かしさを感じさせる要因になっている気がしました。
謎解き的な展開を見せるのに、特殊能力と理由のない唐突な思いつきで進展するストーリー運びは今ひとつですし、呪いを解く鍵を見つける流れにも無理がありました。
とはいえ、ジャパニーズホラーの代名詞となったジメジメした雰囲気とそこに何かがいることを感じさせる画作り、呪いのビデオの不気味な映像、ブラックな結末、そして呪い殺される人々の顔芸は楽しめました。

12位 メリーに首ったけ 3.0

キャメロン・ディアスを主演級のスターに押し上げたファレリー兄弟の大ヒットコメディ。
一人の魅力的な女性を中心にその周囲で男たちがそれぞれの策略をめぐらせて騒動を繰り広げる物語です。
くだらない下ネタやバカバカしいギャグが多いですし、この手のコメディにしては長尺なのですが、ストーリーに推進力があったので最後まで飽きずに楽しめました。
男たちを夢中にさせるマドンナとしてのルックスだけでなく、奥行きのなさそうなキャラクターにもキャメロン・ディアスは適役だった気がします。
そして終始善人であるメインの二人よりも、ずる賢い脇役たちの方が歪みはありながらも人間味を感じられて魅力的でした。

11位 プライベート・ライアン 3.0

 Tom Hanks, Edward Burns, Tom Sizemore, Jeremy Davies, Vin Diesel

人体損壊描写満載のあまりにもリアルな戦闘シーンが物議を醸した戦争映画の大作。
戦争の悲惨さ残酷さを伝えるためと言われればそうなのですが、序盤からなだれ込むような展開で観客の興味を惹きつけ、クライマックスでもしっかりと盛り上がりを作る構成の巧みさが、暴力描写をエンターテイメントとして扱っているような印象を与えてしまっている気がします。
偽善的とまでは言いませんが、優等生な主人公を中心に進むストーリーはあまり心に響きませんでした。
それを脇に置けば、ウリである戦闘シーンの迫力はやはり映画史上に残るものとして楽しめました。

10位 天才マックスの世界 3.0

ウェス・アンダーソン初期の学園コメディ。
この監督の個性として認知されるシンメトリーな構図と作り込まれた美術による絵本のような画作りは今作ではまだ未完成な印象ですが、とぼけたキャラクターとシュールなエピソード、そして水平移動を多用するカメラワークは既に確立されており、音楽のチョイスとスローの使いどころにもセンスがあふれています。
優秀だが変わり者の青年の年上の女性へのほろ苦い恋を交えた青春物語というだけならありがちですが、クラブ活動をかけ持ちしまくっている設定や校長との子ども同士のような友人関係がユニークでおかしかったです。
エピソードの羅列的な構成でストーリー運びの弱さは否めませんが、学生の演劇としてはありえないぶっ飛んだ演出からの拍手喝采そして打ち上げパーティーという終盤の流れは良い映画を観た気にさせるには十分な素晴らしいラストスパートでした。

9位 シンプル・プラン

期せずして手にした大金によって変化していく人間心理と崩壊していく関係性を描いた正統派サスペンスであり、監督のサム・ライミにとっては異色の作品です。
メイン3人のキャスティングが地味ながらも絶妙で、見るからに真面目で正義感の強そうな夫、ひかえめで品のある妻、変わり者で怠惰そうな兄、彼らが当初は期待通りの言動をしながら、すぐに変調をきたしていく過程がおもしろかったです。
雪深い街を舞台にした取り繕うほどどつぼにハマっていく展開はコーエン兄弟の「ファーゴ」を連想させますが、こちらはよりシリアスなタッチで、罪を犯した人々の心理にフォーカスしています。
特に妻の策士ぶりは、やりなれているのかと思うほど冷静かつ的確で恐ろしくも笑えました。

8位 ラッシュアワー 3.5

バディものとしての魅力あふれるアクションコメディシリーズの一作目。
人脈を活かしてひたすら聞き込み、強引に踏み込んでは取り逃がすことを繰り返すだけのストーリーはいたって平凡ですが、その単純さが何も考えずに観て楽しむには最適です。
アイディア満載で手数の多いコミカルなアクションはさすがのおもしろさで、ウザいと言われがちなマシンガントークも個人的には楽しめました。
性格の違いだけでなく、文化の違いもある2人が打ち解けるタイミングもちょうど良く、娯楽映画として文句のない仕上がりです。

7位 パラサイト 3.5

青春映画の要素を増やしたスラッシャーものが流行していた中、侵略ものにも同じ方程式を持ち込んだ青春SFホラー。
B級っぽいホラー演出も楽しいのですが、一番の魅力は相容れない関係だったイケてる生徒イケてない生徒が非常事態の中で団結していく過程です。
ほとんどのシーンで学校を舞台にしているので、尚更青春映画の部分がクローズアップされている気がします。
ブレイク前のスターたちが多数出演しているので、若き日の姿を見つけるのも楽しみの一つになっています。

6位 白い花びら 3.5

20世紀の最後にカウリスマキが放ったのは、モノクロのサイレント映画でした。
感情表現やキャラクター設定はいつも以上に単純化され、まるで童話を映像化したかのようです。一方でストーリーにはどこまでも救いがなく、絵に描いたような幸せが見るも無残に崩れ去っていきます。その組み合わせはさながらエドワード・ゴーリーの世界観です。
元々台詞の少ない作風だけに、サイレントへのチャレンジが効果的に感じられず、むしろ後半になるにつれ増えていく字幕が説明過多に思えてしまいました。

5位 TAXi 4.0

南仏のイメージ通りの自由気ままであっけらかんとした雰囲気が漂うカーアクション満載のコメディ。
メイン2人のコンビネーションが素晴らしく、見た目も性格も正反対の2人のかけ合いが絶妙でした。脇を固めるキャラクターもいちいち個性的でシリーズ化されたのもうなずけます。
車はあくまで小道具として扱っているので、詳しくなくても問題ありません。
事件の謎も変にひねることなく、ストーリーはシンプルそのもの。個性的なキャラクターとカーアクションを何も考えずに楽しめます。

4位 トゥルーマン・ショー 4.0

もしも自分の人生そのものが、台本も演出もあるテレビ番組だったら。
哲学的な問いになり得るテーマですが、ジム・キャリーの存在によって重たくなることなく楽しめる作品になっています。
とはいえ、コミカルだった作品の雰囲気は主人公の覚えた違和感をきっかけにシリアスに転調し、アイデンティティを取り戻すための物語へと変貌します。
感動的なクライマックスをわざと台無しにするようなシニカルなエンディングは、どんなにドラマティックに演出されようと、人の人生など所詮は他人事だと言っているかのようです。

3位 アメリカン・ヒストリーX 4.0

人種間の対立が引き起こす悲劇を描いたヒューマンドラマの傑作。
人種差別と貧困という根の深い社会問題が家庭レベルで生々しく描かれています。
街中でも刑務所でも派閥が存在し、ヒリヒリした緊張感が途切れることがない中で、家族だけで過ごす束の間の安心感が際立っている分、それが壊れてしまった主人公の絶望がよく伝わってきます。
怒りは君を幸せにしたか?怒りに身を任せるには人生は短すぎる。そんな言葉が身に染みるのは、いつも怒りとその結果を経てからであるのが何ともやるせないです。
オープニングとエンディングで象徴的に映し出される波打ち際の永続性は、今作で描かれるような怒りと憎しみの連鎖が、まるで寄せては返す波のように、一度断ち切れたと思ってもまた自分の元に戻ってくることを示しているかのようです。

2位 ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ 4.5

ガイ・リッチーの監督デビュー作であり、スティングや若き日のステイサムが出演していることでも知られる傑作クライムムービー。
90年代後半のイギリスらしいスタイリッシュさ、ユーモア、音楽がつまっています。
この作品の娯楽作品としての数少ない欠点である登場人物が多すぎて把握するのが大変な点も、登場するキャラクターがほとんどが犯罪者なのにみな愛嬌があって魅力的なことで帳消しになっています。
拡散させるだけした設定がラストに向けて収束していくストーリーはピタゴラスイッチ的な快感で、何度も繰り返し観たくなる素晴らしさです。

1位 バッファロー’66 4.5

強がってはいるが情けない刑務所帰りの男が、悪の道に戻りかけるも、女性の母性に触れることで踏み止まる物語は、ボニーとクライドの関係性と成り行きをそのまま裏返したようで、まるで90年代版の「俺たちに明日はない」でした。
田舎町でのダサくて、カッコ悪くて、情けなくて、子供じみたラブストーリーがスタイリッシュで、切なくもおかしい、愛すべき物語になる不思議を感じられる作品です。
トイレ探しのオープニングから、テーブルを囲んで同じ構図が繰り返される実家のシーン、ボウリング場でのタップダンスにスピード写真、モーテルでのお風呂とベッド、そしてホットチョコレートまで、小道具を上手に使いながら印象的なシーンをいくつも作り出しています。


いかがでしたでしょうか。
1998年はホラー、コメディ、アクション、サスペンス、戦争、クライム、社会派ドラマ、ラブストーリーとバラエティ豊かな年でした。
次回の記事では、2001年を取り上げます。

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