今回の記事では、前回に引き続きチェコのシュールレアリスト ヤン・シュヴァンクマイエルの作品を追加で紹介します。
今回は短編作品6本を時系列順で紹介していきます。
棺の家 1966年/10分
リズミカルでコミカルなシュヴァンクマイエルの初期作品。
モルモットを奪い合って、木槌で殴り合う2人の男。争いはやがてエスカレートし、共倒れに終わります。
パペットの人形と生きた動物の共演になんとも言えない気味の悪さを感じますが、パラパラ漫画的な動きが出てきた時の驚き、そこに人間の手指が出てきた時の不気味なミスマッチ感が見どころでした。
評価☆☆★
ドン・ファン 1970年/33分
ドン・ファン伝説を下敷きに、人形劇と着ぐるみを組み合わせた奇妙な作品。
コミカルな中に突如としてグロテスクな描写が混ざる食べ合わせの悪さを意図しているというより、そこに違和感を持っていなさそうな不気味さがなんとも言えないシュヴァンクマイエルっぽさになっている気がします。
ラストの地獄落ちではやけに道徳的な台詞を言わせているのですが、子どもには到底見せられない妙な怖さが良かったです。
評価☆☆
コストニツェ 1970年/11分
チェコに実在し、人骨を使った装飾で知られる納骨堂のドキュメンタリー。
矢継ぎ早な解説のリズムに合わせるように切り替わるカットは心地良いのですが、あまりにも何も起こらず、そして突然終わるので物語としてはもちろんドキュメントとして物足りなさは残ります。
おもしろいのはこの悪趣味な芸術が、本当にドキュメントなのか、あるいはシュヴァンクマイエルの創作なのか作品の中からは判別がつかないところです。
評価☆☆
レオナルドの日記 1972年/12分
言わずと知れた人類史上屈指の天才芸術家レオナルド・ダ・ヴィンチのデッサンと交互に映し出されるのは、飛行機やボクシング、ファッションショーやエクササイズなど規則性があるようでない映像たちです。
人間の肉体とその動きに関心がありそうではあるのですが、デッサンと映像はリンクされているようでしておらず、コラージュとしてあまりおもしろくは感じませんでした。
評価☆★
オトラントの城 1973年/18分
擬似ドキュメンタリーの進行と並行して物語の一場面をアニメーションで描き、ラストでそれを合流させるという、シュヴァンクマイエルらしくないテクニカルな構成の作品。
そのある意味ロジカルな作りのせいか、持ち味のぶっ飛んだシュールさは薄めな気がします。
異色な作品ばかりのシュヴァンクマイエルにとって、普通という意味での異色作です。
評価☆★
アッシャー家の崩壊 1980年/16分
エドガー・アラン・ポーのゴシックホラー小説を映像化した作品。
偉大な作家へのリスペクトなのか、映像から離れて創作活動を行った数年間を経た久しぶりの映画制作だったからなのかは分かりませんが、シュヴァンクマイエルらしいイマジネーションの爆発はさほど見られません。
主役はあくまで朗読であり、映像はあくまでそのイメージ補完にすぎない位置付けとなっています。
評価☆☆
アナザー・カインド・オブ・ラブ 1988年/4分
70年代後半のロンドンパンクの流れに乗って人気を博したバンドの一つ、ストラングラーズのフロントマンであるヒュー・コーンウェルがバンド脱退直前にリリースしたソロ曲のミュージックビデオです。
80年代のシュヴァンクマイエルの総集編的な映像で、彼の作品群を観てからだと新鮮味は薄いのですが、長編作品へとシフトしていく前の自己紹介的な役割を果たしているような気がしました。
評価☆☆★
さいごに
いかがでしたか?
すでに80歳を越え、創作活動からは引退を表明しているシュヴァンクマイエル。
でも、いつかは新作を目にできるかもしれないと、勝手な期待をしながら過去の作品を楽しんでみてはいかがでしょうか。
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