今回の記事では、「家族のかたち 」をテーマにおすすめの映画を5つの切り口で特集します。
物理的には離れていても家族の絆が感じられる感動作から、修復不可能な亀裂が入ってしまう哀しい物語まで、様々な家族のかたちをご覧ください。
つながっている「家族のかたち」
どんなに離れた場所にいても、心の中ではつながっている。離れたからこそ、そのつながりの深さに気づかされ、家族であることを再確認できます。
インターステラー/2014年
時空を超えた親子愛を描いたSFヒューマンドラマの傑作。
人類を滅亡の危機から救うため、思い立ったように太陽系の先まで行ってしまう壮大な物語のようで、描かれているのが親子愛という普遍的なテーマなので、小難しい理論や概念が理解できなくても十分楽しめるようになっています。
宇宙のかなたと実家のカットバックは実にドラマチックで、5次元のビジュアル化も魅力的でした。
AIロボットがあれほど万能な時代なら無人探査でもっとやりようあったのではと思ってしまったり、所々に強引さを感じたり、楽観的かつロマンティックすぎる気はしますが、長尺を感じさせないストーリーテリングと演出力がそんな無粋な疑問を忘れさせてくれます。
評価☆☆☆★
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ホーム・アローン/1990年
カルキンくんを一躍スター子役にした傑作ファミリーコメディ。
しかけはかなりエグいものも多いのですが、泥棒コンビが謎にタフなおかげで笑って楽しめてしまう恐ろしさを感じます。
一番の魅力はハートフルなストーリーでも泥棒退治のコメディシーンでもカルキンくんのかわいらしさでもなく、音楽を含めたクリスマスのわくわくする雰囲気だと思います。
評価☆☆☆☆
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天才スピヴェット/2013年
10歳にして永久機関を発明した天才児が、スミソニアン博物館までの冒険を通じて家族と共に心の傷を乗り越えるまでをユーモアたっぷりに描いた物語。
天才児だけれど生意気でなく、子どもらしく奮闘する主人公のキャラクターが新鮮でした。
「アメリ」では頭の中に広がる想像を映像化する演出が楽しかったですが、今作では頭の中に広がる思考を映像化しています。
主人公は双子だけれど体格で勝る弟の方が、カウボーイ気質の父に自分より愛されていたのではないかと思い悩み、その事故死に対して罪悪感を覚えています。
それは賢い頭でも処理できない感情でした。
そしてその死に対しては、飼い犬も含めて家族のみんなが喪失感を抱いていました。
発明がきっかけで舞い込んだ、オハイオからワシントンD.C.までアメリカ横断の大冒険によって、結果的に家族がまた団結する様にはほのぼのとした感動がありました。
評価☆☆☆☆
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離れていく「家族のかたち」
愛し合っていても、愛し合っているからこそ、相手の為を想って、離れていく家族。それもひとつの家族の愛のかたちです。
パリ、テキサス/1984年
ロードムービーの名手ヴィム・ヴェンダースによる傑作です。
変わり者の兄と車での長旅で心を通わせていく序盤の展開はまるで「レインマン」のようでした。
突然現れた実の父に息子が戸惑うように、主人公もまた父親像を探りながら、二人は距離を縮めていきます。
道路をはさんでの下校、ヒューストンへの旅で失われた親子の4年間を徐々に埋めていく過程は心温まりました。
移動が心の溝を埋めるキーになっており、マジックミラー越しにいくら会話をしたところで、その溝は埋まっていかない虚しさが印象的でした。
育ての親の複雑な心境を置き去りにしているのは気になりましたが、安易なハッピーエンドには向かわず、壊れてしまった愛の後片付けをするような結末が良かったです。
評価☆☆☆☆
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崩壊する「家族のかたち」
平凡な家庭が、外からの刺激で瞬く間に崩れていく様。外から見れば平穏に見えた家庭が、内部からもろくも崩れていく様。それらは悲しくも可笑しい物語です。
アメリカン・ビューティー/1999年
崩壊寸前だった家族がまさに壊れていく様を描いた名作。
メディアが植え付ける理想的な暮らしに取り憑かれ、物質的な価値だけを追いかける亡霊のような生き方から脱却することを訴える作品が相次いだ世紀末において、そのテーマを他のどの作品よりも身近なレベルで描ききっています。
トピックだけ追えばスキャンダラスで俗っぽいストーリーですが、優れた演出と詩的なセリフによって魅力的な物語になっています。
主人公の飄々としたナレーションと淡々とした音楽、そして神の視点を感じさせるカメラワークが作品に客観性を与え、この家庭内の悲劇をコミカルな寓話に見せることに成功しています。
評価☆☆☆☆★
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聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア/2017年
自分の犯した過ちのために、家族の中から誰かを生け贄にしなければならないとしたらどうする?という心が裂かれるようなテーマを直接的ながらトリッキーな設定で描いています。その説明のないトリッキーさがミステリアスな恐怖を生んでいます。
生き残ろうと必死な人、悔い改めて逝こうとする人、選ばれる側の心理がブラックコメディ的で楽しめました。
ただ選ばされる側の父親の心理は今ひとつ。あまりにも合理的な手を尽くさない父親に説得力がなく、彼の心理描写が余分に思えるほどです。それゆえラストの運任せな選択にも、この事件の呪縛に今後も悩まされることを示唆するような意味深なラストシーンにも、苦悩の深さを感じられませんでした。
評価☆☆★
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アマチュア/1979年
映画制作に没頭しすぎるあまり、家族からも見放される男を描いた身につまされるお話。
娘を撮るために買ったカメラがきっかけで、主人公は記録映画の撮影を任されます。カメラを通して周りを見ること、そしてそれをつなぎ合わせて一つの作品とすることの面白さを発見した男はそれにのめりこんでいきます。周囲が望んだものを撮らないことによる軋轢、そして撮ることしかしなくなったことによる家族との心の乖離の果てに、男は顧みることのなかった自分自身にカメラを向けるのです。自分が良いと信じて突き進む道が、人に認められた時の喜び、人に喜ばれない時の不幸は何かに打ち込んだことがある人ならば誰もが共感できるでしょう。キェシロフスキ自身の想いも多分に投影されているであろう初期の傑作。
評価☆☆☆☆★
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歪な「家族のかたち」
一見すると幸せな家族であったり、どこにでもいる平凡な家族でも、その成り立ちや内情を知ると、ゾッとするような歪んだ関係性が見えてくることがあります。
幸福/1964年
絵に描いたような幸せな家庭の変化を描くゾッとするような物語です。
罪悪感のかけらもなく愛人を作る夫、愛人でも構わないと言う女、突発的な行動に出る妻。
登場人物の心情が描かれないことでその言動は唐突かつ不可解に感じるのですが、そこで起きている出来事だけを並べると割とありきたりになるギャップが恐ろしかったです。
子どもたちを送り、ベッドで愛し合い、そして四季の移ろいを感じながらピクニックを楽しむ。
そんな幸せな家族を象徴するような一連のシークエンスの中で、妻が入れ替わっていても、母親が入れ替わっていても、何事もなく過ごす一家の姿はこの上なくブラックでした。
評価☆☆☆★
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チャイルド・プレイ/チャッキーの種/2004年
もっともコメディ色が強いシリーズ5作目。
殺人人形のチャッキー一家が人を殺しまくるスプラッタ描写の一方で、親子関係と子どものアイデンティティをめぐる物語が展開していきます。
夫婦間の子育て方針の違いが衝突を生み、しかもそれが子どもの意思をまったく無視している辺りは、子どもを文字通り自分の人形のように扱う親への皮肉を感じました。
とはいえそれが深掘りされるわけではなく、メタ的な構造や唐突なシャイニングのパロディと同様、詰め込まれた様々なお遊びの一つとして描かれているので、おバカ映画としてライトに楽しめます。
評価☆☆
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籠の中の乙女/2009年
犬を育てるように子育てをする一家の話。散歩にすら連れて行かないあたり、犬よりひどいかもしれません。常軌を逸した行動を全員が真顔でする様は、育つ環境次第で人の価値観や常識はこうも歪み得るのだと思い知らせつつ、ブラックコメディとして笑えるシーンを提供してくれます。
しかし家庭崩壊の要因がささやかすぎて、過剰にドラマチックにしないのは良いとしても、この程度の囲い方ならもっと前にも崩壊の危機は訪れていそうな気がしてしまい、この環境への説得力が薄れてしまったように思います。
評価☆☆☆
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唯一無二の「家族のかたち」
身近にはいないし、我が事としては到底思えない特殊な家族。しかしそこにある絆や憎しみといった近しい存在だからこそ抱く感情には、通じるものがあるのが不思議です。
ゴッドファーザー/1972年
映画史上屈指の名作と名高いマフィア映画の金字塔であり、珠玉の人間ドラマ。
マフィアのファミリーという特殊な世界を舞台としながらも、男としていかに家族を守り、成すべき仕事を果たすかという普遍的なテーマを丁寧かつ重厚に描いているので高評価を多く受けるのもうなずけます。
ドラマチックなストーリーにショッキングな描写を含みながらも、リアリティを失うことのない演出のバランス感覚が素晴らしいです。
女性の扱いが軽すぎて共感しづらかったり、登場人物が多すぎて相関関係を理解しづらかったり、中盤のマイケルの初仕事以降はやや話のテンポとテンションが落ちたりと欠点がないとは思いませんが、クオリティの高い映画のお手本のような作品であることは間違いありません。
評価☆☆☆★
ゴッドファーザー – 映画情報・レビュー・評価・あらすじ・動画配信 | Filmarks映画
ターミネーター2/1991年
1作目を超えた稀有な続編として有名ですが、ジャンルが変わっているので単純比較は難しいのが正直なところです。
ホラー要素は薄れ、アクション比率が大きく増しています。そして恋愛要素は親子愛へと変化しています。
予算規模が大きくなったこと、前作が十分に傑作だったことを考えると、「エイリアン」の時も成功したこの路線変更は大正解であり、見事な成果を上げています。
前作同様、タイムパラドックスに気を取られるよりは、火薬量の増えたターミネーター同士の戦いを見守っている方がシンプルに楽しめます。
評価☆☆☆☆
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ナポレオン・ダイナマイト/2004年
この作品にとっての不幸は、公開当時に最低な邦題をつけられたことではなく、未だにその話題ばかりが先行し、内容が語られることが少ないことかもしれません。
そのゆるい笑いは唯一無二で、もれなく変な登場人物、不思議な家族とペット、主人公が興じる謎の遊びの数々、やたらと長い受話器コード、突然のキレキレダンスと挙げだしたらキリがないほど、ツッコミ待ちでボケまくっています。
カメラワークや演出も、彼らの言動につっこむどころかボケを重ねており、特にダンスのシーンではこれぞクライマックスと言うべき見事なアンサンブルを見せてくれます。
評価☆☆☆★
ナポレオン・ダイナマイト/バス男 – 映画情報・レビュー・評価・あらすじ・動画配信 | Filmarks映画
さいごに
いかがでしたか?
家族のかたちは千差万別ですが、家族に対する愛憎は誰しもが共感したり、ハッとさせられたりする普遍的なテーマです。
ぜひあなたの心に響く「家族のかたち」の物語を探してみてください。
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