映画公開年別マイベスト 1995年

映画年別マイベスト

今回の記事では、公開年別のマイベスト映画作品をご紹介します。
評点は5.0~1.0まで、0.5点きざみの9段階評価で、平均以上となる3.0以上の作品をランクインさせています。

今回取り上げたのは1995年で、11本の作品が3.0点以上でした。

11位 デスペラード 3.0

B級メキシカンアクションの怪作。
毛深く熱苦しく情熱的というラテン系の男のイメージを体現したような主人公のキャラクターが印象的で、個性派俳優スティーブ・ブシェミや嬉々として怪演するタランティーノのキャラが薄く感じてしまうところがおもしろかったです。
復讐劇というドラマチックな王道ストーリーを割と真面目に描いていたかと思いきや、終盤で突然ギターケース型ロケットランチャーが登場したり、傷を負ってヒイヒイ言ったかと思うと大爆発を背に颯爽と立ち去ったりと、ケレン味たっぷりのカッコ良さとコミカルなカッコ悪さの緩急が絶妙でした。

10位 学校の怪談 3.0

90年代の怪談ブームに乗って制作されたジュブナイルホラーシリーズの一作目。
役割としては単なる人物紹介パートかもしれませんが、序盤で描かれる一学期の終業式の日のノスタルジックな雰囲気が素晴らしく、子供の頃の視聴記憶を呼び覚ましてくれます。
ターゲットを踏まえて怖さよりもワクワク重視の作風で、ホラーと言うよりアドベンチャーという印象ですが、時折ハッとするような怖いカットがあるのも良かったです。
息つく間もない手数の多さ、先生のとぼけたキャラクター、少年少女の淡い恋、そしてユーモアあふれる台詞回しは子供向けと切り捨てるにはもったいない楽しさでした。

9位 ブレイブハート 3.0

スコットランドの伝説的英雄の活躍を描いた歴史大作。
銃火器のない時代のアナログな戦闘は迫力がありましたし、見せ物と化している残酷描写も楽しめました。
中世ヨーロッパの歴史劇では悪役のイメージが強いイングランドは、今作でも絵に描いたような悪の権化であり、主人公たちスコットランド人は高潔な人々としてステレオタイプ気味に描き分けられています。
それをエンタメとして分かりやすくて良いと取るか、ドラマの演出として浅はかだと取るかで評価が別れる気がします。
個人的には、歴史的事実を知らないと状況を理解しづらい歴史劇において、分かりやすい描写はありがたかったのですが、それ以上に中年にしか見えない主人公のビジュアルでティーンのようなウブな恋愛を繰り広げることを良しとしてしまう感覚の方に違和感を覚えました。
さらには敵の妻をちゃっかり寝取ってしまうあたり、主人公が信頼のおける人物には見えませんでした。恋愛だってフリーダムということなんでしょうか。

8位 キャスパー

かわいらしい子どものおバケのキャスパーが主人公のテレビアニメを実写映画化したファンタジーコメディ。
ストーリーも演出も子ども向けな印象ではありますが、靴ひものシーンなど笑える場面も随所にあって楽しめました。
ゴーストという素材との相性が良いのかCGは今観ても違和感が少ないです。
悪いゴーストたちの思惑や立ち位置が分かりづらくて、子どもの頃は誰が味方で誰が悪役なのか混乱した記憶があります。
大人になってから観ると、変わり者の父と真っ当な娘の微妙な距離感と関係性がおもしろかったです。

7位 ジュマンジ 3.0

不思議な力を持ったボードゲームによって巻き起こる騒動を描いたファンタジーの良作。
ボードゲームの特性をうまく設定に持ち込み、次に何が起きるのかというワクワク感を引き起こさせてくれます。
動物率高めで飽きてくる頃に参加者を追加して、ストーリーにアクセントを付けているのも良かったです。
結末は予定調和ではありますが、それも含めて安心して楽しめるファミリー映画です。

6位 エンパイア・レコード 3.0

買収されかかっているレコードショップを舞台に、店長とバイトの若者たちと営業に来た落ち目の歌手とが様々な騒動を繰り広げる1日を描いた音楽青春映画。
好きなBGM権を奪いあって始まる開店準備から、シフトや休憩時間という概念が存在しないかのような自由すぎる勤務態度まで、楽しく生きたい若者にとって映画史上最高のバイト先と言えます。
それぞれのキャラクターが抱える悩みをさらりと紹介してさらりと解決するテンポの良さが素晴らしいです。
途中、物語として収集がつくのか心配になりますが、やや強引ながらも音楽映画としてこれ以上ない結末に持ちこむ力技が爽快です。

5位 ヒート 3.0

マイケル・マンが得意分野でその手腕を遺憾なく発揮した重厚なクライムアクションドラマ。
周到で組織的な強盗稼業を仕切る男とそれを執念で追い詰めていく刑事の2人のキレ者が私生活そっちのけでしのぎを削る物語です。
主演2人の共演ばかり有名ですが、知った顔が次から次へと現れる豪華なキャスティングは圧巻でした。
ヤバいヤマだとハードルを上げた銀行強盗のシークエンスは期待を軽く超える緊張感と迫力で、そこに至るまでに積み重ねられる双方のドラマも素晴らしかったです。
しかしそこをピークに下降線な印象だった終盤の1時間は減点要因で、もっと素っ気なくテンポ良く締めてくれても良かった気がします。

4位 ユージュアル・サスぺクツ 3.5

どんでん返し映画といえば必ず名前の挙がる作品であり、90年代を代表するクライムサスペンスの傑作。
今作の最大の魅力であるストーリーテリングはたしかに巧みなのですが、冷静に見るとかなり際どいところを切り抜けており、正体不明の強大な悪として余裕をかましている割には、実際ギリギリセーフであったことに笑ってしまったのですが、初見時には思わず膝を打ってしまうあたり、脚本だけなく演出のうまさも感じました。
オチを知ってしまうと魅力半減な作品と思われがちですが、視線や利き腕、カットの間合いまで配慮された芸の細かさは種明かし後に再見してこそ楽しめる気がします。
有名な面通しのシーンでの悪ノリ感も微笑ましくて良かったです。

3位 トイ・ストーリー 3.5

アニメーション映画の歴史にパラダイムシフトを起こしたピクサーの金字塔。
自分が見ていないところで、おもちゃたちは動き、会話しているかもしれない。
そんな誰しもが一度は妄想したことのある題材を見事に物語化しています。
ファンタジーなようで、扉を開ければそこにあるかもしれない世界という絶妙な設定が素晴らしかったです。
自我のあるおもちゃたちがなぜ大人しく遊ばれているのか。話す声や動く姿を隠し通せるものなのか。
そんな野暮ったい疑問に対して、おもちゃたちなりのルールと使命感を持たせることで最低限の説得力を持たせてくれるので、世界観に入り込めました。
おもちゃたちが生き生きとして魅力的な一方で、人間の感情はストーリー進行上で必要なもの以外省かれており、おかげで自分もおもちゃの一員になったような気分にさせてくれました。

2位 12モンキーズ 4.0

本作の基となった傑作短編「ラ・ジュテ」が持っていた儚い雰囲気はそのままに、断片的だったストーリーをしっかり肉付けし、娯楽作品としても成立させた素晴らしいアップデートの一例です。
頭から離れなくなるテーマ曲から光に包まれた幻想的なオープニングで一気に引き込まれます。
やや難解な筋書きですが、タイムトラベルものによくある、過去に戻って未来を書き換える、という設定ではなく、未来は変えようがない運命論的な話だと思って観るとわかりやすかったです。
科学者たちは歴史の点を変えても線は変わらないことを知っていて、現在を書き換えるためではなく、これからの未来に役立てる情報を得るために主人公を過去へ行かせたのです。
ウイルスも、主人公の末路も、すべては予め決められた運命であり、そのループする構造の中でもがく物語なのだと思いました。

1位 セブン 4.5

「羊たちの沈黙」から始まった90年代サイコスリラーブームのピークとも言える傑作。
宗教的な要素を持ったストーリーや猟奇的な描写に目が行きがちですが、引退間近のサマセットとこれから一旗揚げようとするミルズというメインキャラクター2人の人物描写の対比が素晴らしいです。
80年代バディものにありがちだったベテランと若手が反発し合いながらも理解し合うようになる定番の展開とは異なり、人生の上り坂と下り坂にいる人間の交わりとつながりが丁寧に描かれています。
本筋とはあまり関係のない何気ない食事のシーンや、二人でそろって胸毛を剃るシーンに時間を割いていることから、単なる猟奇サスペンスに終わらせまいというフィンチャーの明確な意図を感じます。
そしてだからこそ、衝撃的なラストのやるせなさは増幅し、心に深く残るものとなったのでしょう。


いかがでしたでしょうか。
1995年はファミリームービーの良作がたくさん生まれた中、ブラッド・ピットが作品選びのセンスの良さを発揮した年でした。
次回の記事では、1981年を取り上げます。

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