映画公開年別マイベスト 1958年

映画年別マイベスト

今回の記事では、公開年別のマイベスト映画作品をご紹介します。
評点は5.0~1.0まで、0.5点きざみの9段階評価で、平均以上となる3.0以上の作品をランクインさせています。

今回取り上げたのは1958年で、4本の作品が3.0点以上でした。

4位 あこがれ 3.0

トリュフォーの処女作であり、イノセンスの美しさと瑞々しさと同時に残酷さも描いた傑作短編。
思春期の少年が抱く年上の女性へのあこがれは、性の目覚めとしてのエロティックさ以上にノスタルジックさが強く感じられます。
それは恋愛や性欲よりももっと前の、母性を求めるような本能的な衝動だからかもしれません。
今作でのそれは、思春期に入ったばかりの少年たちが大人の女性に抱くあこがれと、不思議とそこに表裏一体で存在する憎しみが扱われています。
おそらくは全ての男性が身につまされる物語です。

3位  手錠のまゝの脱獄  3.0

ハリウッド初の黒人スターとなるシドニー・ポワチエの出世作となったサスペンスドラマの秀作。
ポワチエが後の代表作で演じた知的で紳士的な良き黒人像に比べると、今作では粗野で人間味のあるキャラクターを演じています。
邦題の通り手錠と鎖に繋がれたままの2人の逃亡劇ですが、それが黒人と白人だったことでドラマが生まれていく物語で、黒人であることがビハインドであると黒人自身が覆せない事実として受け入れているかのような雰囲気がショッキングですが、だからこそ人種の壁を乗り越えていく展開がドラマチックなものになります。
しかし、制作年代を考えれば当時は刺激的だったであろう設定はとても良かったのですが、2人の関係の変化を描くためのエピソードが弱く、ストーリーとしてはやや物足りない印象で、クライマックスでの決断も唐突感が否めませんでした。

2位 黒い罠 3.0

天才オーソン・ウェルズの代表作の1つとなったクライムスリラー。
アメリカとメキシコの国境で起きた爆破事件をきっかけに、アメリカ人の悪徳刑事とメキシコ人の正義感あふれる刑事によるつば迫り合いが繰り広げられる物語です。
ストーリーは事件の解決などどこ吹く風で展開されるのでそこが弱みのようにも感じられますが、ラストでさらりと皮肉な結果が呟かれることで、この放ったらかし具合にも意味が生まれていた気がしました。
有名な冒頭の長回しはもちろん、あらゆる場面にウェルズの映画作りのセンスが炸裂していて、突然手持ちのような揺れが出たり、極端なローアングルになったり、一画面に複数の情報を入れ込んだりと、カメラをどこに置き、フレームの中のどこに何を配置するが巧みに判断されていました。
96分の劇場公開版がどこまで監督の意図したものになっていたのか分かりませんが、どちらにせよ2人の男のそれぞれの正義が衝突するやや薄味なドラマを観るよりも、その卓越したテクニックに見惚れている方が楽しめる作品のような気がしました。

1位 めまい 3.0

作品全体に漂う幻想的な雰囲気は、物語のミステリアスな側面よりもロマンスとしての側面を際立たせています。
高所恐怖症の元刑事という状況設定、サンフランシスコの場面設定、妄執的な愛情表現、言わずと知れためまいショットとディティールやギミックは魅力的なのですが、本筋のおもしろさが今一つで、ミステリー風メロドラマの域を出られていません。


いかがでしたでしょうか。
1958年は巨匠たちが気を吐くも個人的にはやや不作の年でした。
次回の記事では、1952年を取り上げます。

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