今回の記事では、アメリカの絵本作家 エドワード・ゴーリーを紹介します。
1925年にシカゴで生まれ、主にニューヨークの出版社でイラストレーターやデザイナーのような仕事をしながら、絵本を書いたゴーリー。
2000年に死去するまで、自身の作品以外にも、本の表紙や挿絵、ポスターなど幅広く創作活動を行いました。歴史上の人物かのような風貌と猫を溺愛することは有名ですが、その私生活は謎に包まれています。
ゴーリーは自作を説明することを嫌い、本の中にあるもの、そこで読書が感じたものこそが全てであり、他には何もないと考えていたそうです。
自分自身も創作段階ではその作品が何を意味するのか分からず、アイディアをプロットに落とし込み、形作っていく過程で何かが浮かび上がってくる。そのインスピレーションになっていたのは古いサイレント映画や毎日観劇していたというバレエ、そして犯罪のドキュメントなど。実にシュールレアリズム的な創作方法を取っており、そこに論理的な意味づけや気持ちの良い結末を用意せず、そのまま提示していました。だからこそ、作品が読者の経験や思考と結びついた時に、作者であるゴーリーすら予測できない化学反応が起き、読者の心に何とも言えない印象を残すのだと思います。
もちろん、ただの意味不明な言葉と絵の羅列では読者は最後まで読んでくれません。その点、言葉選びのセンスに優れ、細かい線で独的な画風を持つゴーリーには、絵本という表現形態は最適だったのかもしれません。
また、彼の作品にはグロテスクな表現やエロティックな描写も多分に含まれています。
絵本だからといって子ども向けの作品を志向していた訳ではなく、ポスターやポストカード、デザインの他に自身のアイディアを効果的に形にできる場の一つが絵本だったのだと思います。
ゴーリーは作品の中で子どもを何度も殺しています。それも残酷な方法や、救いのない状況で。しかしそれは彼が非道な人間だからではありません。現実に、子どもたちはあらゆる場所で、あらゆる理由で命を落としているのです。
映画やテレビの物語では、子どもが殺されるシーンは避けられがちです。しかしゴーリーは、よりによって絵本でそれを描きます。彼がモノクロの世界の中に描き出すのは、私たちが生きているこの世界そのものなのです。
次回の記事では、ゴーリーのおすすめ作品を紹介します。
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